満面の笑顔の騎神アリババが言うには、
「ヤマトって、イイ奴だよな」
「・・・・・・」
天使男ジャックは、えらく不機嫌な様子で押し黙る。
それは、二人だけで辺りを見回っている途中で。
「・・・あんな見栄っ張りで、おっちょこちょいで、すっとこどっこいなアイツよりも、ピーターやフッドは、リーダーはお前の方がふさわしいと思ってるんじゃないのか?」
「俺が?何で?」
アリババはとても不思議そうに訊く。
(・・・・・・素、か・・・・・・)
と、吐息をついて、男ジャック。
アリババの白いしっぽを確認すれば、嘘をついていないかどうか、すぐ分かる。
以前、男ジャックは何度か、しっぽに関する実験をしたことがある。
色々な状況をふってみて、アリババのしっぽがどういう反応を示すか、見てみたのだ。
たとえば、何かを考えている時。
アリババのしっぽは、横に忙しくふれる。パタパタパタパタ。自分の白い背中に、白いしっぽが次々あたる。
アリババの調子が良い時。
アリババのしっぽは、上にふわっと上がって、ふさふさと毛づやもいい。
そして、落ち込んだ時。
「俺のせいだ・・・・・・」と、アリババは、とても辛そうな面をして、しょんぼりと、しっぽは下に下がった。
(まあ、しっぽを見なくたって、元々、こいつは嘘をつかないんだけど)
初めてオアシスの里で出会った時の天の邪鬼ぶりが嘘だったように、今のこいつには、まるっきり裏表がない。
多分、こいつは、一度でも馴れてしまえば、相手に完全に気を許してしまうタイプなんだろう。
男ジャックとしては、少し、呆れたように、
(そう簡単に、相手を信用していいものなのかねえ・・・・・・)
「そういえばヤマトが、お前のことを誉めてたぞ」
「えっ」
隣のアリババに、男ジャックは、あからさまに眉をしかめる。
「十字架天使とヤマトとお前の三人で、旅をしていた時にさ。何度もお前に助けられたって」
「・・・・・・」
「お前がいたから、ここまで来れたってさ!」
と、アリババは楽しそうに言った。
「・・・・・・何、考えたてんだか・・・・・・」
と、男ジャックは呟き、アリババは、こちらを見てニコニコ笑っている。
「・・・・・・ふん」
男ジャックはアリババを抜かして、一人でずんずんと先に行き出す。
アリババは、男ジャックの後ろ姿に声をかける。
「男ジャック」
「何だ?」
と、男ジャックは振り返りもせず、言う。
「もっと、素直になれよなア」
「・・・・・・ふん!」
おわり
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