「いくら探しても見付からないぜ・・・」
神帝男ジャックは、両手を後ろにつき、背すじを伸ばして、お疲れモードに。
「もう。次から次へと心配ばかりかけさせる人ですのー」
ぷんぷん可愛い頬を膨らませる、アローエンジェル。
「アリババ神帝は責任を感じているのでしょう」
ヘッドロココは穏やかに微笑み。一同は、草むらに腰をおろしている。
「魔スターPを倒そうと。・・・・・・無茶をしなければ良いのですが・・・・・・」
心配して沈むヘッドロココに、アローエンジェルは彼を励まそうと、明るく一回手を叩き。
「きっと、大丈夫ですの!だって、ヤマト神帝さんがついていますモノ!!」
「・・・あの二人だから心配なんだよな、」
後ろで、神帝フッドが神帝ピーターに、そっと耳打ち。
「あの神帝どものことよりも、我が身を心配したらどうだ・・・・・・?」
空から響く、その声に、神帝隊は即座に剣を抜きヘッドロココを取り囲み、ヘッドロココは、その輪の中心で尖聖剣を現す。
「魔スターP!今度は不覚をとりません!」
黒い風の渦が、ヘッドロココ達の上空を舐めるように通過し、ばさり、マントを翻し、魔スターPが目の前に降り立つ。
「いきがろうと、所詮、無駄なアガキよ!」
剣を構えるロココ達一向を鼻で笑い、魔スターPは、メリケンサックをはめた左手を向ける。放たれる、青い光。
「デビルタラン!」
ヘッドロココ達は、その光の中に、一網打尽に絡め取られる。
体がずしりと重い。光が重い。金縛りのように身動きがとれず、それどころか力が入らない。聖理力がどんどん吸い取られていく。
「他愛もないわ」
魔スターPは右の剣をかざし、動けないロココの元に、ひたりと近付いてくる。
「待てー!」
空から声。魔スターPとロココの間に割ってはいる、一つの姿。一同を捕らえるデビルタランの魔光を前につきだした盾で受け止めるは、アリババ神帝。
「貴様、生きていたか!」
見事、己の魔力を抑えるアリババを、まとめて呑み込まんと、魔スターPは、さらに魔力を上げれば。
アリババ神帝は、盾とは反対の手に握った夢鏡剣に理力を集める。
「頼むぞ!夢鏡剣!」
夢鏡剣が、彼の首にかけたペンダントヘッドと呼応し、青白く光る。
「たあ!」
気合い一撃。夢鏡剣にためた理力を、一気に魔スターPに放つ。
「チィ!」
魔スターPはデビルタランを放つ手を外し、マントの裾を掴むと、それで体をすっぽり隠し、アリババの理力の直撃を受ける。デビルタランの魔光が、ふっと消えた。
「大丈夫ですか!ロココ様!」
一足遅れをとったヤマト神帝が、よろめくヘッドロココの体を支える。
「こざかしいガキどもが!」
魔スターPが吠える。
「ゴードン師!」
「へい!」と顔を出す、ゴードン師が三人。
今しがたの、瞬動師。虎の顔持つ、怪虎師。竜の面の、竜眼師。三方から、ヘッドロココ達に襲い掛かる。
弾丸のように目に見えぬ速さで、ゴードン師は縦横無尽に駆け回り、彼等を翻弄する。神帝達は、それぞれバラバラになって、剣をがむしゃらに振り続ける。しかし、効果はなく、防戦にまわる一方である。
アリババ神帝の脳裏に浮かぶ、先程のコマ送鈴の言葉。
(・・・一人一人の能力ではとっても悪魔に勝てないコマ。だからこうして、いつも二人で協力してるでコマ・・・)
ヤマト神帝は持ち前の素早さを発揮できない。怪我をした足をかばいながら、剣を振るう。敵の動きをかろうじて察知しても、体が反応しきれず、手薄になっていた脇から攻撃される。
肩に力を張り、気を持ち直して剣を構える。
ヤマトは、自分の背中に軽く触れた何かを感じた。
振り返れば、アリババ。アリババも剣を構えて。
二人、背中を合わせる。
アリババ神帝が剣をかかげて、一同に叫ぶ。
「みんな!コンビを組むんだ!」
死角となる背中を預け合い、協力して敵の攻撃を迎え撃つ。お互いに足りぬ部分は補い合い、お互いに助け合う・・・。
神帝達は、すぐにアリババの意図に気付き、近くにいた仲間同士で組み合う。こうして、四方八方から襲い掛かる敵の攻撃を存分にはね返す。
アローエンジェルが声をあげる。
「アリババ神帝さんったら、あったまがイイですのー!」
二人は互いの背中を預けながら。
「一人では難しくても!」
アリババ神帝が言う。
「二人で力を合わせれば!」
ヤマト神帝が笑顔で後に続く。アリババ神帝が不敵に笑った。
「さあ来い!アクマども!」
おわり
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