野聖エルサMは憂いの渦中にある。
「どうして、お前までついてきたんだ!」
アリババ神帝が、両の拳を握って怒鳴れば。
「なんで、すぐ一人で勝手に行動をとるんだ!」
ヤマト神帝が身を乗り出して、怒鳴り返す。
(やれやれ・・・)
彼女はキングフット聖棒の獣の手の部分で、自分の反対の手をポンポンと軽く叩き、少し離れた所で、二人の言い合いを見守る。
螺エリアに落ちたヘッドロココ達に警告を発し、魔スターPを探している自分に、断り無しに、くっついてきた神帝の二人。
さて、どうしたものやら・・・・・・。
「これは俺のミスだ!俺に責任をとらせてくれ!」
「違う!お前のせいじゃない!これは初めから仕掛けられていた罠だったんだ!」
「でも、その罠にまんまと引っかかってしまったのは、全て俺のせいだ!だから、俺が必ず魔スターPを!」
「バカ!お前一人で勝てるとでも思ってるのか!あんな、大物の悪魔ヘッドを相手にい!」
「分かってるさ!でも、一戦を交えるまでよ!相討ちになってでも。その覚悟は出来てる!」
「アリババ!何を言ってるんだ!」
キッとヤマトは眉を険しくつり上げて。
「勝手な行動はかえって、みんなの迷惑になるってこと、なんで分からないんだ!あの時だって!」
途端にアリババの表情が変わる。恐れと変わり、ヤマトの腰にさした日出剣を垣間見る。
「ごめん、ヤマト・・・・・・。お前の言う通りだ・・・」
アリババは小さく体をすくめて、うなだれる。
「また、俺の勝手な行動で、みんなに迷惑を・・・・・・」
心なしか震えるアリババに、ヤマトは自分の発言を悔やむ。
「すまない・・・・・・」
「アリババ・・・・・・」
「アリババ神帝、ヤマト神帝・・・・・・」
野聖エルサMが二人に近付く。
「どうしますか?みんなの所に戻りますか?」
優しく、彼女は語りかける。
「魔スターPを倒すなど、やめておきなさい。魔スターPは、あなた達が今まで戦ってきた悪魔とは違うのです・・・」
アリババの様子を伺い、しばし黙りこむヤマト。意を決したように、いきなりガバリと地面に膝をつく。
「お願いします!ボク達も一緒に連れていって下さい!」
土下座をしたヤマト神帝は、まっすぐに野聖エルサMを見上げる。
「ボク達二人で、どうしても、魔スターPを倒したいんです!」
「ヤマト神帝・・・」
野聖エルサMはつぶやく。
ヤマト神帝は明るく笑って、
「なっ、アリババ!」
と、アリババ神帝に振り返る。
「あ、・・・ああ・・・・」
その場に立ち尽くしていたアリババは、眉を下げ、小さく返事をした。
「分かりました・・・」
野聖エルサMは、しょうがないといった風に、一度目を閉じてから、きりりと厳しい表情になって。
「但し、絶対に二人だけで立ち向かわないこと。これだけは必ず約束してください」
黒い空間に黄色い渦を巻く。石を積み重ねた巨大な螺旋の中を、三人は飛び続けている。
終始無言で、野聖エルサMとヤマト神帝の後から付いてくる、アリババ神帝の元に、ヤマトがやって来る。
「ここは本当に、へんてこりんな所だな。いろんなモノが渦巻き状になってる」
ヤマトはアリババに明るく話し掛けて、延々と続く、黄色い螺旋を見渡す。
「ああ・・・・・・」
アリババは、力の無い返事を。
「この螺旋の外に出たら、上手く飛べないんだって。方向性を持ったエリアなのかな」
ヤマトは飛びながら、くるりんと横に回転して。
「もしかしたら、この螺旋に沿って飛んでいけば、抜け道にでられるかもしれないね!」
「・・・・・・」
アリババは視線を落としてから。
「ヤマト・・・・・・」
重い口を。
「やっぱり、みんなの所に戻った方が・・・・・・」
「でも、それじゃあ、お前の気がすまないだろ」
「・・・・・・」
ニイと、ヤマトは得意気に笑って。
「ボクの気だって、すまないさ!このまま、魔スターPに言い様にされてたまるもんかっ、てね」
ヤマトは胸元でうんと拳を握って見せて。
「ボク達二人で、魔スターPに一矢報いてやろう!」
そして、おどけて。
「なあんせ、こっちには、野聖エルサM様がついていらっしゃるんだから!」
アリババは隣のヤマトを見て、再び、進む先に視線をおくる。
「ほら、いつまでも気にすんなよ!いつもの調子の良さは、どうしたんだ!」
アリババはふっと笑い、片眉をちょっと上げ、ヤマトに顔を向け。
「お調子者の本家のお前に、言われたかねえなあー」
「何おう!」
「!」
二人はピタリと飛ぶのを止めた。先を飛んでいた野聖エルサMが、警戒を顕わに立ち止まっている。彼女が持つ、キングフット聖棒の獣の手が、白く光っている。
「近くに、魔スターPがいます・・・」
中編
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